第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
「……ごめんね、心配してくれたのに」
「んーん。嫌な思いして悲しいとかじゃないならいいんスよ」
優しい。涼太は出逢ってからずっと、優しいひと。
すれ違ったり、悲しかったり、辛かったり、色んな事があったけれど、このひとの優しさだけは変わらない。
「ありがとう、涼太」
こんなひとと一緒に居られるなんて、なんて幸せ者なんだろう。
このひとと作った家族と生きていけるなんて、何度考えてもキセキみたいだ。
「あ」
思わずふたりで声を合わせてしまった。
視線の先、子ども用フロアマットの上でブロック遊びをしていた息子は……うつぶせになって寝ている。
「はしゃいで疲れたんスかね」
「うん、そうかも」
最近は気軽に外出出来ないから日中の運動量も減っていた。
海常のみんなとの通話で暴れたのが良い刺激になったのかな。
「ぷ、行き倒れてるみたいっスね」
涼太は寝付いたら何をしても起きない息子をひょいと抱きかかえて、寝室へと連れて行った。
ちょっと変な時間のお昼寝だけれど……お腹が空いたらきっと起きて来るだろう。
というよりも、この寝入りようだと、暫く起きて来ないかも。
「涼太、先にご飯にしちゃおうか?」
「そっスねぇ……みわ、こんな状況だし豪華なディナーとか気にしないでいいんスからね」
「えっ」
ずっとずっと悩んでいたことを突然言われて。
本当に涼太って魔法使いなの?
それともやっぱり私、顔に出てた?
「何してくれる予定だったんスか?」
「あ、の……ごめんなさい、いつものオニオングラタンスープの仕込みは終わっているからそれを仕上げて、あとはね、あんまりいいお肉じゃないけど……お肉を焼いたりケーキを焼いたりして、なんとか豪華になればいいなと思っていたの……」
私が白状すると、涼太はまた微笑んだ。