第2章 unconfident(氷室辰也)
女の子だもん。誰だって可愛くなりたい、よね?
「みわー、あれ取って!」
「はいはい……これ?」
「違うー、その隣!」
ここは、某激安の殿堂。
私が今手に取ったのは、棚の最上段にあるピンクの小花柄のシャンプーボトル。
雑誌によく載ってる、香水のブランドから出ている、ちょっとお高めの品だ。
「いやー、アンタいたら男要らないわ。便利すぎ」
「そりゃどーも」
身長が170センチもある私が常日頃から言われるのは、カッコいい、カッコいい、カッコいい。
たまに悪口でゴリラとか。
そして基本、こうやって脚立代わり。
私、人間ですからね!?
髪を伸ばそうが、スカートを履こうが、その印象は変わる事がない。
いや、いいのよ。
カッコいいって言われるのも、嫌いじゃない。
でも、本当は。
ちらり、隣の友人を見やる。
小柄で色白美人の彼女は、モテる。
いつも、気が付けば彼氏が変わってる。
……私も、可愛いって言われたい。
無理だって分かってるけど、小さくなって守りたいって思われたい。
ずっとそう思っていた私に、転機が訪れた。
まさかまさかの、彼氏が出来たのである。
言い訳をする訳じゃないけど、元々、モテない訳ではなかった。
でも、告白される事はあっても、『付き合う』というのがイマイチピンと来なくて……。
周りの子より遥かに遅れているという自覚がありながらも、その違和感を抱えたままお付き合いは出来なかった。
お陰で、大学生となった今でも、男性経験はナシ。
初恋人となってくれた183センチの彼は、私のことを可愛いと言う。
アメリカ帰りの彼は、挨拶するかの如く、愛を囁く。
それはもう、王子様の様に、顔をあわせるたびに。
そんなの、今まで経験したことがなかった。
『女の子扱い』されること。