第6章 Stay Home(黄瀬涼太)
宅配ボックスを開錠すると、中には少し大きめの白い段ボール。
差出人は……海常の先輩方だ。
そう、今日6月18日は涼太のお誕生日。
こんな大変な時期にも変わらず送ってくださるなんて。
きっと涼太、すごく喜ぶ。
外はしとしと雨模様。
晴れの日はみんなでルーフバルコニーでご飯を食べたりするんだけれど、今日は一日おうちの中で過ごすことになりそう。
外にもロクに出れないし、お昼ご飯は何にしようかな、夕飯は何にしようかなと、なんだか一日中ご飯のことばかりを考えている日が続くけれど、今日は特別。
今日は、涼太のお誕生日なのだ。
いつもならお誕生日だからとディナーに行ったり、おうちでも少し豪華な食事にしたりするのだけれど、今年ばかりはこの数ヶ月前からの感染症流行の影響で、満足にお買い物すら出来ていないのである。
小さな子どもがいるから、必要な物は涼太がサッと買いに出てくれるし……。
プレゼントは、今年はリクエストを貰っていたから、新しいお財布を購入した。
店舗は休業してしまっていたけれど、オンラインで取り寄せたのでそこは安心。
困っているのは、食事。
涼太の大好きなオニオングラタンスープは作れるけれど、みんな在宅時間が長いからなのか、製菓材料も軒並み売り切れていて……。
今年は、バスク風チーズケーキになりそう。
うう、こんな事なら諦めてオードブルセットでも注文しておいた方がマシだったかもしれない。
まさかこんなに何ヶ月も自粛期間が続くなんて。見通しが甘すぎた。
気軽に買い物に行く事すら出来ず、日に日に深刻になっていく事態。
折角一日中一緒に過ごせるお誕生日なのに……本当にダメダメすぎる。
どうしよう、かな。
大したことのないご飯で、申し訳ないな……。
部屋に戻ると、目に入ってくるのは楽しそうなふたりの姿。
ダイニングテーブルで、ぬりえをしている。
そう……去年の涼太のお誕生日から家族を増やそうと試みているものの、なかなか恵まれずにいた。
赤ちゃんは授かりもの。
焦っても仕方がないし、ストレスになってしまったら本末転倒だから、私たちのペースでのんびりいこうねと夫婦で話していたところ。