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【黒バス:R18】with gratitude

第6章 Stay Home(黄瀬涼太)


荷物はいつもはコンシェルジュの方が受け取ってくださるんだけれど、この緊急事態の中、出来るだけ人と人が対面する機会が減るようにと、急遽マンション内に大型の宅配ボックスが設置された。

配達員さん達も、大変だろう。
顧客からの心無い行為で傷付いたという話もひとつふたつじゃない。
マスクすら満足に支給されない状態で、感染の危険と隣り合わせの状況にも関わらず、こうして荷物を届けて下さって。
ありがたい。本当にありがたい。

そう……マスクは全国で品薄が続いているようだ。
転売を禁止する法律がやっと整備されてきたというのもあって、これから少しずつ店頭にも並ぶのかもしれないけれど……。

元々消耗品は普段から買い置きしているタイプだったから、マスクも消毒液もお尻拭きもトイレットペーパーも充分に買ってあるし、我が家は困ってはいないんだけど……今はどこを探しても売っていないと聞いた。

せめてもと、宅配ボックスの中に個包装のマスクと、消毒用アルコールジェルの小さいパウチを忍ばせておいた。
少しでもお役に立てればいいけれど。

食材も買い占めがひどいんだって。
パスタや粉物は、スーパーの棚から姿を消してしまったらしい。
こういう時に人間の汚い部分というか……本性が出てしまうような気がしていて。

それと同時に、改めて、様々なひとのお仕事を実感する。
自粛生活になってもこうやって荷物を届けてくださる方がいるし、電気ガス水道が止まる事はないし、電車に乗ろうと思えば走っているし、時間短縮営業とはいえ、スーパーやコンビニは常に営業している。
病院だって勿論休みなしだ。

きっと皆不安を抱えているだろう。
感染リスクだってある。家族だっている。
それでも最前線で戦う人々を、本当に尊敬している。

私に出来るのは、冷静に情報を分析して受け止めて、ちゃんと"正しく恐れる"こと。
無駄な買い占めをしないこと。
そして、大切な家族を守ること。

それはほんの小さな辛抱かもしれないけれど。
ほんの少しの気遣いかもしれないけれど。

でもきっと必ずどこかで何らかの形になると信じて。


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