第5章 Additional happiness……?(黄瀬涼太)
「なんか最近、こう、生活が落ち着いたなって思うのは気のせいっスかね」
「あ……うん、私もそう思っていたよ」
息子ももうすぐ二歳になろうというところで、赤ちゃんの頃よりも長い時間纏まって寝てくれるようになったし、睡眠をとることで、心身共に余裕が出来てきた事を実感していた。
卒乳してからは、こうして夜お酒を酌み交わす事も増えたし、……夫婦のコミュニケーションの時間も出来るようになった。
それでも涼太は相変わらず忙しいひとだし、ずっと一緒に居られるというわけでもない。
そろそろ、私も少し働きに出た方がいいのかな……なんて、先日そんな話になったんだけれど、収入面で全く困っていないのに、子どもと離れるのはどうなんだろうと色々悩んでしまって。
こうして悩む事が出来るのも、気持ちに余裕が出来たからなのかもしれない。
最近の出来事をあれやこれやとお話しているうちに、ワインのボトルは底が見えてしまっていた。
「あ、まだ飲む? この間買ったのが……」
追加のお酒を持って来ようと、キッチンへ向かおうとした私の腕を、大きな手が捕まえた。
「っ、わっ」
涼太は無言のまま私の腕を引いて、バランスを崩したドン臭い私は、彼に向かって倒れ込んでしまった。
「ご、ごめんなさ」
起き上がろうとした身体はびくりともしなくて、そのまま大きな腕に抱き締められた。
「……涼太?」
おずおずと顔を上げた途端、熱い唇が私のそれと重なる。
そのまま、お互いの呼吸を奪い合うかのような激しいキスになって……身体中を巡る血液が沸騰したかのように、全身が熱い。
いつのまにか、涼太のスイッチが入ってしまっているみたいだ。
今までの会話は夫婦特有の話題で、色っぽいものは無かったかのように感じるのだけれど……。
でも、そんな事どうでも良くなるくらいに、涼太とのキスは気持ちがいい。
お腹の奥が、じんじんしてくる。
身体が勝手に、彼を求め始める。
「みわ……ベッド、行こうか」
ぼんやりと思考に靄をかけたまま、ゆるりと首を上下に動かした。