第4章 Happy Happy yellow(黄瀬涼太)
じっくりと果実のような唇を堪能して、ココロの中でブレーキを踏む。
久しぶりに甘い時間を過ごせた。
もう十分だ。
セックスレス……というわけではないけど、産後、身体を重ねる回数は激減した。
当然だ、まだひとりでは何も出来ない息子の面倒をずっと見ているのだから。
それを無理強いするつもりは全くない。
以前、オレに気を遣って口で発散させてくれたコトがあったけど、終わった後、快感以上に後悔が襲ってきてしまって。
あれ以来、本当にタイミングが合った時だけ、するようにしてる。
息子は最近つかまり立ちを覚えて、今まで以上に目が離せない。
神経を使っているんだろう、表情にも疲れが滲み出てる。
今はイチャイチャよりも、休息。
「じゃ、これ食べたら寝よっか。オレ、シャワー済ませて来たし」
意識してたのに、少し早口になってしまった。
気付かれてないっスよね?
ケーキ皿を食器棚から出そうとしたオレのシャツの裾が、下に引かれた。
「ん?」
「あの……まだ、お腹いっぱい、だし」
「そっか、じゃ後にするっスか?」
食が細いみわのコトだ、豪華な夕食で満腹になってしまったらしい。
「あの……先に、休憩、を」
「うん、ゆっくりしてていいっスよ。シャワー浴びたんスね、シャンプーの匂いがする。寝ちゃっていいんスよ、泣いたらオレが抱っこするから」
「う……ん、あの、そうじゃ、なくてね……」
言い淀むのはいつもの事だけど、耳まで真っ赤に染まっている事に、今初めて気が付いた。
あれ?
なんだか昔を思い出す。
なかったっけ、こんなこと。
「折角のお誕生日、で……最近、なかなかそういう時間、なかったし……」
これ、まさか?
「これって、お誘いして貰ってるってことで、いいんスよね?」
なんて無粋なコトを聞いてんだ、オレは。
でも、体裁を取り繕う余裕がなくて。
薔薇の花びらみたいに真っ赤に染めた頬のまま頷いたみわを連れて、ベッドルームへと向かった。