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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


「マスター……昨日から本当に、ありがとうございました。マスターから頂いたお言葉、忘れません」

結局、ホットチョコレートにホットカフェラテと、2杯もご馳走になってしまった。

お金をお支払いしようとしても、もうレジは締めてしまいましてとやんわり断られてしまって。

感謝の気持ちをひたすらに込めて、お辞儀をした。

振り返れば、もう過去だ。
もう、ここに来るのもやめよう。

昨日の出逢いと想い出を大切にこころにしまって、一歩……

踏み……

出して……

「……なんでここにいんの~?」

上り始めた朝日のせいで、逆光だ。
真っ黒で、誰だか分からない。

分からないのに、そのシルエットと声だけで、もう判別出来てしまう。

「なんで、って……こっちの、セリフ」

どうして、紫原さんがここにいるの?
お店は閉店したばかりだ、出勤したというわけではないだろう。

万が一でも鉢合わせしないようにと、この時間に来たんだから。

予想以上に、気まずい。
振り返ると、マスターはもう店内に入ってしまった後のようだ。

「みわちん」

このまま、軽く挨拶をして帰ろう。
昨日の事は、きっと事故くらいにしか思ってない筈。

表情が見えないのは好都合だ。
会釈をして、去ろうとしたその腕を……大きな手に、掴まれた。

「っ……」

「待てって、言ってんの」

少し、怒ったような声も好きだ……なんて、場違いなことばかり考えて。

「大丈夫……誰にも言ったりしないよ。昨日は、酔っ払いに付き添ってくれてありがとう」

何にもなかった。
私たちの間には、何も。

「なんで、なんにもなかった事にしようとしてるわけ~?」

「なんで、って……」

自分が傷つきたくないだけだ。
もう、誰かを愛するのも信じるのも怖い。

「だって、居なくなったのは、紫原さん、でしょ?」

口の中がカラカラだ。
目が覚めた時に感じた寂しさが、また噴出する。
あれが、事実。

「……は~? お菓子買いに出ただけなのに、チェックアウトしてっちゃったのはそっちっしょ~?」

「……え?」


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