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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


「最初は、職場の方かと思いました。しかし、バーカウンターで顔を寄せ合い、仲睦まじく食事をする様子は、とてもそうとは思えませんでした」

そっか……納得。
昨日見かけた彼女かどうかは分からないけれど、もうかなり前から、浮気してたんだ。

「なんとなく気になって、料理をお出しする際に、それとなく話しかけてみたのです。……彼女なんです、嬉しそうに彼はそう言いました。わたくしも紫原も、みわさんとは別れてしまったのだと、そう思いました。もう彼女がここに来る事はないのだと、残念に思っていました」

その話を聞いても、それほどショックではない事に驚く。
それは……昨日抱きしめてくれた、大きな胸のおかげだ。
むしろ、元彼と別れたから、紫原さんとの出逢いがあったんだなんて思える程。

「みわさんの明るい声に、優しい笑顔に癒されていた従業員は少なくない筈です。誰にも分け隔てなく接する姿は、とても素敵だと思いました」

マスターの言葉には裏表がなくて、なんだか凄く恥ずかしい。

紫原さんも、そう思ってくれてたりしたのかな……なんてね。都合よく解釈しすぎ。

「しかし、次の週に彼はあなたを連れてきた。前の週に他の女性としていたように、楽しそうに頬にキスをしたりしながら。もしかして……直感し、思わず紫原の方を見てしまいました。その時の、紫原の怒りに満ちた横顔は忘れられません」

「え……」

紫原さんが、元彼の浮気を知って、怒って……くれていた?

「紫原は、あなたに恋をしていた。その瞬間に、確信したのです」

……恋をして、いた?

待って、誰が、誰に?

思いもしていなかったマスターの話の展開に、思考回路の歯車が少しずつギシギシと軋んでいくのを感じた。


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