第3章 Sweets in the rain(紫原敦)
「え、どうして」
彼にもお返しを……と思ったのに、触れようとした途端、いーから、とアッサリ拒否されてしまった。
……もしかしたら、彼女以外にはされたくない、とかあるのかな。
ちょっと潔癖だったりして……
「っひゃあ!?」
なんて勝手な想像を巡らせていると、敦は突然下半身に顔をうずめてきた。
熱い息がかかって……絶頂を迎えたばかりの秘部をこんなに近くで見られてるなんて。
「ちょっと……なに、なに」
元彼は、そんな事しなかった。
元々、彼は無駄な事が嫌いだったし、舐めたりしない事もなかったけれど……ごくたまに、挿入するために仕方なく、といった感じだったもの。
敦が、どういうつもりでこうしてるのか分からない。
何をされるでもなく、ただ見られている、この状況が堪らなく恥ずかしい。
身体を起こして彼の様子を窺おうとした瞬間……秘部を走る生温かい刺激に、腰が躍る。
「っあ……っ、あっ」
一見面倒臭がりのように見える彼が、こんなに丁寧にしてくれるなんて……そんなに女に飢えるようなタイプにも見えない。
きっと、気まぐれなタイプなんだ。
あまり深く考えるのはやめよう。
……さっきから、自分を守る為の言い訳でいっぱいだ。
朝になって、この関係が終わった時に辛くならないよう、必死で予防線を張ってる。
私のこれも、ただの性欲だ。
恋とか愛とかじゃない、本能的なもの。
野生動物のように、湧き上がる欲を抑えもせずに交尾する。
いいじゃないか、誰に非難される謂れもない。
今だけ、今だけは。
「敦……もう、大丈夫、だから……」
彼と繋がっていたい。
敦も、そんな私の気持ちを汲み取ってくれたのか、こくりと頷いてくれた。