第3章 Sweets in the rain(紫原敦)
愛撫が再開されて、じんわりと陰部から浸み出す快感に、首筋から肩口にかけて、ゾクゾクし始める。
「あっ、あ……」
上り詰めていくのを感じる。
ここまでされておいてなんだけど、イッたら全てを曝け出してしまうようで、なんだか怖い。
受け止めてくれるのかな。
今だけは、恋人のようにしていいのかな。
「紫……ばら、くん、イキ、そう」
泣きすぎて、頭が痛くなってきた。
でも、そんなの薄れてしまいそうなほどの快感。
「敦って呼んだら、イカせてあげる〜」
気持ち良いポイントからずれたところをわざと擦るのが、ずるい。
男の顔が一変して、悪戯するこどもの様に。
感情を、揺さぶらないで。そんな風に言われたら、従うしかないじゃない。
「……おねがい、……敦」
「……おっけー」
敦は何故か少しだけ声を詰まらせて、愛撫はまた再開された。
再び上がっていくゲージ。
「あっ、あぁ、あっ、あつしぃ……」
イク瞬間、理性が吹き飛んで、ひたすら彼の名前を呼んだ気がする。
4年付き合った彼氏ではなく、昨晩出逢ったばかりの彼を。
「はぁ……っ、はぁ……」
絶頂の余韻に動けないでいると、紫原くん……敦は、指を引き抜いて自分の衣服に手をかけた。
セーターらしき服とインナーシャツを投げ捨てて、こちらを向き直ったその身体は……言葉を失う程に、美しくて。
抱きついた時にも感じたけれど、この肉体は継続的な鍛錬の産物だ。
彼の高身長からしても……何かスポーツをやっているんだろうか。
年齢すら聞いていない。
恐らく年下だろうという程度にしか分からない……そうだよね、こうしてるから勘違いしてしまいそうになるけれど、私は彼の事、なんにも知らないんだ。
もし、機会があれば聞いてみよう、彼の事を。
多分、ないと思うけれど。
経験がないから推測に過ぎないけど、こういうこの場だけの関係というのは、性交渉というのは、後腐れがない事がメリットなんだろう。
下手な事を聞いて、中断させたくない。
偽りでも、まだ必要とされたい。