第3章 Sweets in the rain(紫原敦)
身長が高いひとって、指も長いんだ。
指とは思えない、質量。
ゆっくりと、中の造りを確かめるかのように、擦られるのが堪らない。
待って、よく考えてみたらどうしてこんな事になってるんだっけ。
少し前の事も思い出せない。
脳みそまで掻き混ぜられてるみたいに、気持ちいい。
唇が離れると、喘ぎ声が口から勝手に流れ出す。
「あぁ……っ」
「ココ、いいんだ〜」
「あ、んっ、はぁ……っ」
彼の愛撫は、あるはずもない愛を感じられて……なんか凄く、泣きたくなる。
こんな私でもまだ、求めて貰えるんだって。
ただの性欲処理だと思うけれど、それでも、こんなに優しくされて、気持ち良くして貰えて。
嬉しい……。
感情にかかっていた鍵が外れた音がする。
それと同時に、指の動きが止まった。
「……みわちん?」
彼が私の頬に添えた左手の動きで、泣いてしまっているんだという事に初めて気がついた。
「……嫌ならやめるし〜」
「待って、違うの! あの……なんて言うか……こんな風にして貰える事って、なかったから」
愛されない女って事、暴露してどうするの。
恥ずかしすぎるし、何より返答に困るって。
惨めな言葉に、次から次へと涙が溢れてくる。
「あんな男、別れて正解だし〜」
「……うん」
……なんとなくその言い方に違和感を覚えつつも、きっと昨夜あれもこれも喋ったんだろう。
彼に隠す事、ないもの。
「みわちん、寂しいんでしょ」
その囁くような優しい声に、決壊した。
脳裏に焼きつく、新しい彼女とのシーン。
彼女は、これから元彼にたっぷり愛されていくんだろう。
私は、誰にも必要とされずにひとりで生きていくんだろう。
「……う、ん……さみ、しい……」
いい歳して、何子どもみたいな事言ってるんだろう。
ウジウジして、呆れられたりしないだろうか?
でも、返ってきた言葉は
「……俺と居る間は、忘れさせてやんし」
まるで恋人の睦言だ。