第3章 Sweets in the rain(紫原敦)
「あ……っ」
油断してた。
なんとなく柔らかくなった雰囲気に乗じてか、中断されていた愛撫が、遠慮がちに再開された。
太腿を撫でられただけなのに、声を上げる程気持ちがいいなんて、やっぱりどうかしてる。
一所懸命に、拒否しなければならない理由と、拒否できない理由を考える。
二律背反の思考に、余計に理性の行き場が分からなくなるだけなのに。
取り返しのつかない事になったら、どうするの?
……取り返しのつかない事になる、って考えたけれど、それは一体何に対して?
だって、もう彼氏もいない。
現在フリーの私が、誰とどうしてたって、自由じゃないか。
もしこれで、紫原さんが殺人犯だったら?
……それはそれで、いいかな。
なんか、生きていくのも疲れちゃったし。
せめて気持ちいい時か、眠っている間に殺して欲しいなという希望があるくらいだ。
折角のご縁、こうして求められる事自体貴重なんだもん。
楽しんじゃえば、いいんじゃない?
……なんて、ちょっと悪女っぽい思考を巡らせてみたものの、その実、私には全く余裕がない。
だって、本当に気持ちがいいんだもの。
触れ方も、優しい声も、びっくりする位に感じてしまう。
首筋から鎖骨にかけてじっくりと舐められて、乳房に感じるのは少しの痛み。
「あぁ……っ」
再び先端を口内で弄ばれて、踊るように喘いでいると……大きな手が、陰毛に触れた。
「あ、そこは、っ」
いよいよそこに触れられたら、絶対に戻れない自信がある。
期待・不安・戸惑い……色んな感情がドロドロ渦巻いていたのに、触れられた瞬間に、快感に塗り替えられた。
「……すご」
「あっ、あ……んっんっ、ぅ」
「みわちん……濡れすぎ~」
「は、ぁっ」
指先が入り口を撫でた途端、ぬるりと滑るのを感じる。
年々少なくなる愛液の分泌量に、地味に悩まされていたのに……なに、これ?