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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


「ねえ、あなたの名前を聞かせて」

半裸で問うようなものじゃない。
そして、こんなタイミングで聞くような事でもない。

でも、紫の彼は訝しい表情を浮かべるでもなく、すんなりと答えてくれた。

「……紫原、敦」

「あつし……どういう字?」

あつしは、どう説明しようかと考えあぐねている様子で……無言のまま、私の手を取った。

手のひらを、節くれ立った指がなぞる。
触れるか触れないかのタッチに、思わず身体は反応する。
指は、【敦】という字を書いた。

「敦……」

「覚えた~? みわ」

え?

「どうして、私の名前……」

「さぁね~」

きっと、酔っ払って昨日、勝手に明かしたんだろう。
一方的に自己紹介をして、相手の名前を覚えていないとか失礼すぎる。

それにしても……

「むらさきばら、って素敵な名前だね。最初に見た時、妖精さんかと思ったもん」

「妖精ってナニソレ~? ちゃんと人間だし」

「でも、薔薇って感じはあんまりしないかな。どちらかと言うと、スイートピーって感じ」

「……いや、紫原のばらは薔薇じゃねーし! roseじゃねーし!」

「えっ」

「紫薔薇って……それじゃあ駅のラクガキだし~」

「ごめんなさい……なんか勝手に変換されちゃってた」

「そんな事言われたの、みわちんがハジメテなんだけど~?」

みわちん?
急にそんな親し気に!?

私も、呼び方を考えた方がいいのかな。
紫原くん? 敦くん?

「……あつちん?」

「ちょ、やめてよね~なんか卑猥な呼び方」

「卑猥っ!?」

卑猥って、どの辺りが? ちん?
だって、そっちがそう呼んだから……。

「みわちんって案外天然系~?」

「そんな事ないんだけどなぁ……」

こつん、額と額がぶつかる。
目が合って、二人で吹き出した。

紫原くんは、すごく幸せそうに微笑んでて。

恋人でもないのに凄く恋人みたいだ。
彼氏とこんな風に笑い合った事、最近あったっけ。


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