第3章 Sweets in the rain(紫原敦)
なんだか凄く……救われた気分だ。
マスターの言葉も勿論のこと、口から体内に入って、中から癒してくれるこのスイーツ達が一番の功労者かもしれない。
きっと、優しいひとが作ったんだろうな。
愛がこもってるのが伝わってくるもの。
「マスター……やっぱり、まだ飲みたいです。駅前まではタクシーを使うので、ご心配には及びません」
「……かしこまりました」
「えへへ、やったぁ」
それから、一体何杯飲んだかな。
結構お酒には強い方なのに、もう最後の方には記憶がない。
寝てたみたいだ……目の前には、見覚えのない天井。
飲み食いしているうちに眠くなってきちゃって、それでお店を出たんだった。
あれだけ食べたんだ、かなりの支払額だったはずなんだけど……いくらしたんだっけ。
カード払いにしたんだっけ、全く覚えてないや。
帰ったら明細を確認しなきゃ。
タクシー……乗ったんだっけ。
運転手さん、こんな酔っ払いじゃ困っただろうなぁ。
ホテルは結局どこにしたんだろ?
何にも覚えてないとか、やばくない?
まあ、とにかく無事だったから結果オーライだ。
それに良かった、頭痛とかはない。
これで二日酔いとか、台無しだもんね。
お酒に強い身体に産んでくれたお母さんに感謝。
まだ、朝には程遠い室内の暗さ。
シャワー、浴びておこうかな……。
覚醒しきっていないまま身体を起こすと、窓際に……え、誰か、座ってる?
一気に目が覚めて、背筋を冷たいものが走る。
待って、本当に覚えてない。
誰かと一緒に移動した?
いくら考えを巡らせても、記憶の箱を順番に開けても、見つからない。
周りの景色からして、シティホテルなのは間違いない。
「……どなた、ですか」
薄暗い部屋の中、相手の顔が確認出来ないから、覚悟を決めて話しかけた。
相手は窓の外を見ていたらしく、私の声を聞いてこちらを振り返った。
「……え……どうして」
そこに座っていたのは、アメジストの妖精さん。