第1章 Happy……Birthday☆(黄瀬涼太)
どうせ長い時間過ごすのはリビングだから、とリビングが広めの部屋にして正解だった。
寝室の他に、一応お互いの部屋もあるにはあるが、予想通り就寝までリビングにふたりで居る事が殆どだ。
壁際のサイドボードの上には、沢山の写真が飾られている。
高校時代、ウィンターカップで優勝した時の写真から始まり、デート中に撮った写真から……永遠の愛を誓い合った、あの日の写真。
額の中のみわは純白のドレスに身を包み、満面の笑みを零している。
高いドレスは勿体ないよと遠慮するみわをなんとか説得して着せたんだったな。
色白の肌が一際映える素材と色、花嫁さんよりも新郎さんの方が熱心ですね、って笑われたっけ。
ダイニングテーブルの上には、豪華なディナーが並んでいる。
湯気が上がっているところを見ると、オレが帰って来るタイミングに合わせて作ってくれていたようだ。
眠りに落ちてから、そんなに長い時間は経っていないらしい。
疲れやすい時期なのに、また無理して。
一緒に過ごす事が出来れば、お祝いなんていいって、言ったのに。
6月といえど、朝晩はまだ冷え込む。
薄手のブランケットを持って来て、空気を取り込みながらふわりと掛けた。
もう日中は真夏のような暑さだけれど、元々冷え性の彼女、油断せずに室内ではレッグウォーマーを履いている。
むくんでしまっている足が痛々しくて、ゆっくりとさすり始めた。
彼女は今、命懸けの仕事中だ。
随分と大きくなったお腹に手を当てると、ぽこんと中から反応が。
「ただいま」
ぽこん、ぽこん。
いつもはオレが触っても滅多に反応してくれないのに。
じんわりと、目の奥が熱くなる。
「パパのお誕生日だから、サービスっスか?」
気まぐれだから、オレ似かな。