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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


「綺麗……」

底に向かってグラデーションになっているのがすっごく綺麗で、思わず見とれてしまう。
この色が崩れてしまうのが嫌で、なかなか口をつけられない。

「これは、なんというお酒ですか?」

「このカクテルに名前はございませんが……そうですね、【紫水晶】にしましょうか」

「紫水晶……アメジストの事ですよね」

「ええ。アメジストは【愛の守護石】とか、【真実の愛を守り抜く石】と呼ばれているんですよ。
愛と慈しみの心を芽生えさせることによって、誠実なパートナーとの出会いや、恋人との絆を深めて、真実の愛を守り抜く強さを育ててくれると言われています」

「真実の、愛……」

走馬灯のように脳裏を巡る、彼氏との想い出。
いっぱい笑った。いっぱい泣いた。

こんな結末がくるなんて、想像もしていなかった。

「恋人さんと、仲直り出来るといいですね」

「……はい」

マスターにこの話はしていない。
さっきの紫の彼に話しただけなのに。
顧客の引き継ぎはちゃんと出来てるってことね……なんて、またよく分からない感想を抱いたりして。

そこで、ひとつの可能性に行き当たった。
彼はもしかして、アメジストの妖精だったのでは?
アメジストの御加護で、ここまで導いてくれたとか……。

……ないわ、ないない。
元々スピリチュアルなものは殆ど信じてないんだった。
御加護どころかバチが当たるって。

「アメジストは、さしずめ恋愛成就へと導いてくれるパワーストーン、という所でしょうか。パワーを充電して行かれて下さいね」

「ありがとうございます……」

「更に、ストレスで疲れきった心を芯から癒し、穏やかな気持ちに導いてくれるパワーを強く持った石でもあるそうです。今のお客様のためにあるような石ですね」

優しい言葉に癒される。
こんな風に心配されたりする事、最近あったかな。

職場ではバリバリ仕事するから、頼りにされてる。
光栄な事だ、認められるということは。

……でも、時々は弱音を吐きたくなる事だってあるよ。
そんなに強くないもん。


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