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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


「あなたこそ、ここで何してるんですか?」

「どう見ても雨宿りに決まってるし~」

「……そうですね」

完全にバカな女だと思われているだろう。

結局彼と私、どちらも傘を持っておらず、だからと言って雨が弱まる事もなく、一刻も早く立ち去りたいのに足止めを食っていた。

「……ねえ、その酷い顔、泣いた~?」

ビクリと、過剰なまでに反応してしまった事を自覚する。
その柔らかい口調とは裏腹な言葉に、一瞬詰まってしまった。

「……泣いて、ないです」

きっと化粧もドロドロだろう。
流れたのは雨のせいなのか涙のせいなのか、もう記憶にない。

「彼氏と別れたとか~?」

その言葉は、正に正鵠を射た。
のんびりとした口調のせいなのか、攻撃力が高い。
喉の奥が焼けるように熱く感じる。

「……別れた、っていうか、喧嘩しただけです」

みっともない、その場凌ぎの嘘だ。
フラれたくせに。
更に新しい彼女とイチャついてるのを見せつけられて。

「……ふ~ん」

彼は興味なさそうに、頬杖をついたまま外へ視線を移した。

……質問したのはそっちなのに、どうでもいい返事をするなんて、失礼じゃない。

虚しい気持ちに苛つきが加わって、ココロの中がぐちゃぐちゃに荒れてるのが分かる。
もうひとつスイッチが押されれば、きっと彼に暴言を浴びせるに違いない。

私が感情的になると、いつも面倒臭いという顔をされた。
なんで私が怒ってるかなんて、考えもしてくれなかった。
私も、自分が怒ってるからって、ただ乱暴な気持ちをぶつけるだけだった。

今ならよく分かる。
慣れた関係に甘えて、思いやりが足りなくなってたんだ。

でも今更そんな事に気が付いても、後の祭り。
もう彼は、戻って来ないんだから。

「……ほらこれ、食べれば~?」

「え……お菓子?」

無愛想な彼の手には、小さい頃よく食べた棒状の駄菓子。
手の大きさとは不釣り合いなそれが、なんだか面白くて。



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