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【黒バス:R18】with gratitude

第3章 Sweets in the rain(紫原敦)


そこから、どうやって彼と別れて駅に向かったのか全く記憶にない。
彼と一緒の電車には乗りたくないからと、改札の中に消えていく背中を見送った気がする。

暫くその場でぼんやりして、気が付いたら電車に乗っていた。

寄りかかったドアはひんやりと冷たく、目線より少し下にある、広告付きの小窓に幾筋もの線が走る。

「ほら……やっぱり、降ってきちゃった」

独り言なんてブツブツ言っちゃって、もうこれじゃただの怪しいオバサンだよ。

ああ、なんか美味しい物でも食べてくれば良かった。
おひとりさま万歳だ。

っていうか、そもそもお店の予約すらしてなかったって何?
いつから別れようと思ってたわけ?
4年も付き合って、最後がこれ?
好きな子が出来たって、それいつ?
どんな子? 私より若い子?
もう付き合ってんじゃないの?

そう言えばこの間会った時、素っ気なかった気がする。
エッチも、いつにもましてやる気がないって言うか。
私が散々口でして、すぐに挿入しておしまい。

……考えるのはやめよう。
今日は駅前でお買い物して、家で好きな物を食べて、ゆっくりお風呂に入って寝よう。
幸いにも明日は休みだ。
どうせ雨だ、洗濯も出来ないだろうし思いっ切り朝寝坊しちゃおう。

そうだそうだ、楽しんじゃおう。
前を向こうとするこころと裏腹に、足がズキンと痛んだ。
履き慣れていないヒールのせいだ。

なんだか、ついてない。
早くリセットしたい。

ゆっくりと電車は停車する。
駅……ではなく、窓の外の景色は市街地のままなのに。

「……?」

『お客様にお知らせいたします。只今、〇〇駅におきまして、人身事故が発生いたしました』

……は?

たまに乗った電車で、どうしてこうなるの?
私が不幸電波でも飛ばしたか?

ドアを蹴り飛ばしたくなって、グッと堪えた。



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