第13章 Mic check!(黄瀬涼太)
『ん?
【黄瀬君らしくない手際の良さ。スタッフの仕事か?】
さすがみんな、オレのこと良く分かってる。オレはちんぷんかんぷんだからね、奥さんが準備手伝ってくれたんスよ〜』
涼太は日頃から当たり前のように私の存在を口に出すので、ドキッとする。
ちょっと怖いけど、ファンの方が嫌な気持ちになっていないかとコメント欄を覗く。
予想に反して、好意的なコメントで溢れていた。
きっとこれも、彼の人柄の賜物だろう。
『次はコレ!
【お誕生日おめでとうございます! 黄瀬君のチャンネルが生きがいです。PR一切なしで、黄瀬君のおすすめスキンケア教えてください。出来れば今使ってるのがいいです】
おっけー、ちょっと待ってて』
マイクのミュートボタンを押し、ヘッドセットを置いた涼太が席を立つ。
間も無く、涼太の自室のドアが開いた。
こちらに手を振ってからパタパタと洗面所に向かうと、いつも使っている化粧水を片手に戻ってきた。
「ごめんね、待たせて」
「ううん、私も楽しんで聴いてるし」
「好きなことして待っててくれていいのに。ちょっと恥ずいし」
そう言い終わるや否や、額に柔らかいキスを落として彼は部屋に戻っていった。
その一瞬で私はこんなにも頬が熱いのに、画面に再び現れた涼太はいつも通り。敵うわけない。
『お待たせ〜。今オレが使ってるのはこれ。水色と緑のも使ったけど、一番合ってるのはこの紫のやつかな。保湿力あってオススメっスよ。大容量ボトル買っちゃった』
チャット欄で商品名を聞く声が多数上がり、涼太がラベルを読み上げてこの質問は終わった。
去年もお誕生日配信でおすすめの商品を聞かれて、その後にその企業とのコラボが決まったりして……配信の影響力の強さを感じてる。