第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
「涼太っ、だめ、まだお風呂入ってな……っ」
「じゃあ風呂一緒に入ろっか」
あれよあれよという間に下着姿にされて焦っている姿が可愛い。
意地悪したい欲がふつふつと湧き上がってくるし、それを止める理性はもうほぼ機能していないようだ。
「で、でももう帰って来るかも」
「今さっき、姉ちゃん達と一緒に風呂入ってるってメッセージが来たばっかじゃないスか」
「そうでした……」
「夫婦水入らずは久しぶりなんだし、せっかくだからイチャイチャしたいんスけど」
「う、それは、うん、私もそうなんだけど……」
「え」
まさかの返事に、時が止まった。
「私もそれはね、うん、思ってるよ、でもなんかこう……恥ずかしくて……何したらいいのか分かんなくなっちゃって」
「なんだ、そんなこと? なーんもしなくていいんスよ、オレに任せて」
余裕ぶっこいてる感じでそう言ったけど、手にじっとりと汗をかいてるのに気づいた。
「わ、っ」
「今日は声抑えなくていいし、起きてくるかもって心配しなくて大丈夫っスよ」
「ん……っ」
「ほらもっと、口、あけて」
舌に吸い付くと、腰がびくんと跳ねる。
オレの背中に回してる手にも、二の腕を掴んでいる手にも、殆ど力が入ってない。
「ぁ、っ……」
挿入するとかしないとか、いや勿論したいけど、そればっかりじゃなくて。
もっともっと、触れ合いたい。
重なった唇の熱さも、絡み合う舌の動きも漏れ出る声も、肌が触れ合ったところから滲み出る安心感も、もっと味わいたい。
普段、世間に自分という存在を露出する仕事だからか、知らずにどんどんと自分自身を纏う膜が厚くなっていく。
厚くなった膜は次第に硬くなり、壁になって自分を守ろうとするのだと、この間赤司っちに会った時に言われたっけ。