第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
『黄瀬選手は大活躍の日々ですが、活動の支えになっているものは何ですか?』
『そうですね、ファンの皆さんの応援はとても力になります。あとは……自分がこうして頑張れているのは、家族や友人など、周りに居てくれる人たちの協力のおかげです』
最近人気の女子アナに問われ、超よそ行きの顔でそう言う自分の姿を画面越しに誰かと一緒に見るのは、なんか気恥ずかしいというか……センパイやキセキの世代の皆となら茶化されたりふざけたりするけど、隣の妻は食い入るように見てるもんだから余計に。
「……本物が隣にいるんだから、残りは留守中に録画で見てくんないスか? なんかじっくり観られるの恥ずかしいんスけど」
「えー、折角だから観た……」
『最後に、テレビの前の皆さんにメッセージをお願いします!』
「ちょ、りょ……っ、ん」
オレの名前が紡がれる前に、視界を遮りその唇を奪った。
「んっ……ぅ」
「オレの事、ちゃんと見てよ」
薄く開いた唇に舌を滑り込ませるのと同時にリモコンでテレビを消したが、腕の中のみわは、オレを受け止めるのに必死で気がついてないみたいだ。
背中に回された手に力が入ってる。
擦り合わせるように動く膝と揺れる腰は、身体が覚えているであろう、キスの先の展開のせいだろうか。
「りょう、た……熱、は、っ」
「そんなのとっくに下がったってば」
ソファは狭いけど、そんなことに構っていられない。
服の上から触れた胸が柔らかくて。
ワンピースの裾から差し入れた手に当たった肌の熱さに、もう止められないと自覚した。