第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
人に求められる仕事だ。
もはや今更プレッシャーとかそんな繊細な感情は殆ど残ってないけど、それでも神経は使ってるんだと思う。
子ども達に求められるのは、そりゃめちゃくちゃ嬉しい。でもそれは父親として大切なこの子達を絶対に守ってあげなくてはという保護者の感覚だし……。
みわに求められるのは、それらとは全く種類が違う。長い間自分をずっと身近で見てくれていて、支えてくれている彼女に求められるというのは、これ以上になく精神的に満たされるのだ。
父親でも、バスケ選手でも、モデルでもない。
自分が自分でいられる時間。
……大体ゴチャゴチャこんな風に考えるのは自分の欲を必死で押さえ付けてる時ってのは分かってる。
一所懸命、停止寸前の理性を再起動させようと。
……でもやっぱり、再起動はムリかも。
ほっぺた真っ赤だし。
結婚してもう何年? 全然慣れないこの反応、必死に応じてくれてるの見てるだけで興奮するんスけど。
「ちょっとここで一回シてから風呂行かない?」
「そ、そんな気軽に……あっ、やっぱり、っ、ここではちょっと」
ダウンライトだけとはいえ、寝室でする時よりもだいぶ明るいのが気になっているようだ。
これから風呂行ったらもっと明るいけど、それはいいんだろうか。
「……んっ、う……」
「ん〜……でも、もう待てないんスけど……」
「私、あのですね、もう、あんまり余裕が……」
まだキスくらいしかしてないのに、そんなんでこの後大丈夫?
とか思った瞬間、頭の中にこの先の想像が流れてしまって、それが下半身の血流に直結しだした。
ブラのホックを外して解放された胸は、しっとりと汗ばんでいる。
ちょっと焦らそうと思ってたのに、焦らされてるのがどっちか分からない状態になりつつあるのはいつものことだ。