第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)
子ども達は父が家まで送り届けてくれるとは聞いてるものの、何が起こるか分からないのが育児というもので、いつでも運転できるよう、二人ともノンアルコールカクテルで乾杯した。
「あらためまして……涼太、お誕生日おめでとう」
「へへ、うん、ありがと」
温かいスープをひとくち。
コンソメと飴色になった玉ねぎの甘みが、疲れた身体に沁みわたる。
「みわのオニオングラタンスープはホント美味いんスよね。店出せるっスわ」
「嬉しいな。前はレシピ通り作るだけだったけど、最近は自分なりにアレンジ出来るようになってきたよ」
照れ臭そうに笑うのがまた可愛くて。
存在が癒しである。
最近は肉をわさび醤油で食べるのに二人でハマってる。サーモンのマリネもオレがリクエストしたものだ。
ケーキは子ども達がいる時に一緒に食べる約束をしてる。
食事をしながら今日のイベントやバスケの事をおしゃべりして。
留守中の子どもやみわの話を聞いて。
胸がじんわりと満たされていくのを感じる。
こうやって家族や夫婦で過ごす時間は、試合や仕事で得たものとは違う、心の栄養になる。
「はー幸せ、美味かった。ご馳走様でした!」
「お粗末さまでした。お腹痛くない? 胸焼けしてない?」
「全然。めちゃくちゃ元気になったっス」
「無理しないでね。……あ!」
食後の緑茶を運んで来たみわは、パタパタとテレビへ向かった。
「今日、放映日だった!」
「え? なんの?」
「この間インタビュー受けたって言ってた、あの」
「あーー、だいぶ前のアレか」
夕方の情報番組に取材されたヤツだ。
みわは、録画予約していてもリアルタイムで観たいらしい。