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【黒バス:R18】with gratitude

第11章 thank you for everything(黄瀬涼太)


「お腹に優しいものにしよっか」

ガラッと冷凍庫を開けたのを見て、慌てて止めに入った。

「いや、ホントに全然大丈夫なんだって。腹減ってるし! 用意してくれてたものいただくっス」

このコンソメの良い香りは、みわお手製のオニオングラタンスープ。

肉が焼けた香ばしい匂いも漂っている。
帰る時間に合わせて作ってくれたんだろう。

「消化にいいものの方が良くないかな」

みわがオレを見る目が、完全に病人に向けたそれである。

「待って。たまになるからみわも知ってるっしょ、ホントのホントのマジで元気なんだって! 食ったら寝かせようとしてるでしょ!」

「うん、分かるけど……疲れてるんだから寝た方がいいかなって……」

「夫婦でイチャイチャするの楽しみにしてたんスから、寝てる場合じゃないんだって」

「い、イチャイチャって!」

「たまには二人でお風呂入ろっか」

「え!」

パッと向こうを向いたみわの耳が真っ赤なのが分かる。
神様、可愛い妻を食べてもいいですか。
マジで熱出してるヒマなんてオレには一秒もありません。

配膳の手伝いは断固拒否され、大人しくダイニングで座って待っていると、窓の外からしとしとと水音が聞こえ始めた。

「あー……降って来ちゃったっスね」

「今夜本降りになるみたいだね」

「オレ、雨は好きじゃなかったんスけどね……」

みわと出逢ってから、雨が嫌いじゃなくなった。
雨の中に、沢山の想い出が出来たから。

『自分』が絶対だったオレの中に、ある日突然するりと入り込んできた彼女の存在が、人生まで変えた。

目の前の笑顔を生涯守っていきたいなんて、そんな風に考える未来の存在を、中学時代の自分が聞いたら信じたかな。


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