第10章 Change……!?(黄瀬涼太)
「みわってマジ大変なんだって、今回の件でよーく分かったっスわ」
「そうかな? 涼太も凄い人気で大変なんだって思ったよ……」
「とりあえずみわは病院行って。こんな痛いの普通じゃないから」
「う、はい」
涼太が、いつものように私の髪を指先でくるんと巻いて遊んでいる。
入れ替わっているなんてなかったかのように。
お互いの日常を知って、また少し距離が縮まったような気がした。
「あとね、足が速くてビックリしちゃった。嬉しくて駐車場まで走っちゃったの」
「はは、見たかったっスわ。オレはもう鉛のような重さで……」
「……すみませんほんと……」
またおしゃべりして、笑って。
目が合って、そっとキスをした。
不思議と、自分自身としているような気はしなかった。
食事は家にあるもので済ませて、ワインを開けた。
お誕生日の前祝いのつもりだったけど、今の状態じゃなんか落ち着かなくて、普段通りに過ごした。
夜はゆるりと身を寄せ合うようにして、眠った。
明日のことは考えずに。
今、一緒に居る時間だけを楽しんだ。
「……ん……」
太陽の光がカーテンの隙間から差し込んでいる。
朝だ。
視界に入って来たのは、鍛えられた厚い胸板。
そして、下腹部に感じる鈍痛。
「涼太……」
「良かった……戻ったみたいっスね」
今度は深い、キス。
ゆっくりと広がっていく快感に、全身が震えた。
「……涼太、お誕生日おめでとう。生まれて来てくれて、ありがとう」
「ありがと。はぁ、ちゃんとみわから聞けて良かったっス」
「本当に、なんだったんだろうね」
「相手の苦労をもっと知れってコトっスかねえ?」
大きな手は、私のお腹を撫でてくれる。
すっと痛みが引いていくような、あったかさ。
「今度また入れ替わったら、とりあえず一回ヤッてみるってのはどうっスかね?」
「ふふ、とりあえずって」
不思議な不思議な体験だった。
結果的に、涼太のことをもっともっと好きになっただけなんだけれども。