第2章 unconfident(氷室辰也)
一緒に入ろうか、などという、ひっくり返りそうなほどのお願いは流石に辞退して、隅々まで洗い上げた身体にふかふかのバスローブを羽織って、私はベッドに座っていた。
自然と、前を閉じる手に力が入る。
氷室さんは、その手をやんわりと退かそうとする。
「ね、氷室さん待って、電気……明るい」
「明るくないと見えないよ、みわ」
え、でも、だって。
全部見えちゃうよ。
「う、う、う」
「じゃあ、こうしよう」
彼がひねったツマミは、部屋を僅かながら暗くしてくれる。
……本当に、僅か。
「あの、氷室さん、あの」
「これでいい、ね?」
「う、ん……」
そんな、男らしい色香を漂わせながらも、おちゃめに聞かれたら、反論出来るわけもなく。
「ん……」
顔中に降り注ぐキスの嵐。
くすぐったさに身を捩らせると、隙を見つけたかのように、首筋を唇が走った。
「っ、んん」
熱い愛撫と初めての感覚に、どうしたらいいのか分からないまま、肌を滑る彼の柔らかい髪をくしゃりと掴む。
「みわ、綺麗だよ」
「──っ、あ」
チリリ、肌が焼けたように痛んだところに散らされる、花弁のような所有印。
これ、キスマークだ……なんて思っているうちに、彼の手はどんどん下りていく。
「みわの足、スラリと長くて綺麗だね」
「でも、私……背、おっきいから」
「俺と目線が近いし、俺は好きだけどな」
「……っ」
不思議だ。
たったその一言で、あんなに気にしていたコンプレックスが、少し好きになれるかもしれない。
「氷室さん、ありがとう……」
その言葉と共に、再び熱い唇が重なる。
気持ちいい。
ふわふわ、する。