第2章 unconfident(氷室辰也)
「みわ」
「っはい!?」
氷室さんの事ばかりチラチラ見ているのを、気付かれてしまったんだろうか?
そう思ったんだけど、彼の口から出た言葉は違っていて。
「誕生日、欲しいものがあるんだ」
「え、本当に?」
珍しい。
いつも、私にそんなお願いをしてくれる事ってないから。
一応、お誕生日プレゼントは用意してきたけれど、彼の希望があるのなら叶えたい!
すごく嬉しい!
「何? 私に出来る事なら、なんでも」
「無理だったら言って」
「うん」
無理な事なんかないよ。
あ、でもお金はそんなに余裕がないかも……でも、出来る限り頑張るから、そう言おうとして。
「これが欲しいんだ」
彼が、スッとテーブルの上に置いたのは、1枚の白いカード。
中央には、このホテルのマークが入っている。
「これ……」
カードに触れる指が震えているのが分かる。
裏面には、4桁の数字。
これ、
ルームキー……?
待って、それって。
耳が熱くなる。
「I want you」
そっと目を合わせた彼の口からゆっくりと紡がれた、甘い甘い誘惑。
……拒否する理由が、ない。
親にも、今日は女友達の家にお泊まりすると言ってきてある。
私は、ゆっくりと首を縦に振った。