第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「負担って、それはおうちにいる私のお仕事なんだから大丈夫だよ」
「ブッブー。育児は本来夫婦でするもんなんスよ。オレが今ちゃんと参加出来てないから、その分を補いたいの」
一日中家族と一緒に居たい。
可愛い妻と、可愛い子ども達と、ずーっと一緒に居たい。
しかし働き盛りの現在、そんな願いはそうそう叶う訳もなく。
……オフシーズンなんだからちょっと仕事を減らそう、マジで。
「涼太、家族のこといっぱい考えてくれてありがとう」
「こちらこそ。ほらこのディッシュプレート、オレがいいなって言ってたやつ」
「うん、この間お買い物に行ったらね、偶然見かけて」
休めと言ってるのに、つまめるものがあるからと細々したものを出してくれた。
大理石のディッシュプレートは、オレが欲しがってたやつ。
「ワイングラスも欲しかったやつっスね」
「あ、これはオンラインで……」
黒い台座がオシャレで、みわと飲む時に使いたいと言ってたやつ。
今はみかんジュースが注がれているけど、グラスのおかげで高級カクテルにも見える。
「そうやってオレがいない間もオレのこと考えてくれてんのが嬉しいんスよ。子どもの事だけでもいっぱいいっぱいなのに」
家族が増えて、さすがに結婚前と同じ感情とは言えないけど……でもオレは、今でもみわに恋してるような気持ちがあるのは事実。
「だから、それと同じくらい自分のことも大事にして。オレの大切なヒトなんだから」
ダイニングテーブルからソファへの移動を促して、腰掛けるとすぐに唇を重ねた。
疲れると甘いものが食べたくなるのと同じように、この甘い果実を味わいたくなる。
舌で口内を愛撫すると、蕩けてくる表情と甘くなっていく声。
目が合うと、安心したように微笑んだ。
「……っ、ぅ」
細い腰が揺れてる。
久しぶりに思い切り抱きたい……けど、今日はこれ以上身体に負担をかけず、ゆっくり休んで欲しいというのも本音。
可愛い唇を暫く堪能して、身体から力が抜けきって、ぐったりしたところでやっと解放してあげられた。