第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「涼太がいっぱい働いていっぱい貰ったお金だからね、大事にしなきゃ。あ、でも子ども達のお買い物は結構してる……」
「だーかーら! オレにとっては子どもも嫁さんも大事なの! そこに差はないの! みわも好きなもの買ってのんびり過ごして欲しいんスよ!」
欲が無さすぎるというのも困りものである。
買い替えを提案しても『まだ使えるから大丈夫だよ』とか言いながら、笑うんだ。
「家事代行とか週に何日か雇うとか、シッターさんに来て貰うとかはどうスか?」
「えっ!?」
考えもしなかったとでも言うかのように、目がまんまるだ。
子どもは小さいし家は一般家庭よりもずっと広い。みわも時々仕事をしたりしてるし、何にもヘンな事はない。
「大丈夫だよ、この有様で心配だとは思うけど、一応ひとりでも頑張れてるから」
「そうじゃなくて、頑張らなくていいって! 頼れるモンはなんでも使ってこうって話なんスよ。姉ちゃんとかにもっと来て貰ってもいいんスけど、みわが気を遣うなら逆効果だよなって」
「お義母さんやお義姉さんたちには、今のままでも本当に十分手伝って頂いてるから!」
母親も姉ちゃんも、もっと遊びに来たくてウズウズしているらしい。
でも義理の家族が来ると疲れるだろうと、控えめにしてるんだとか。
大人の手が増えるのは単純に楽にはなるだろうけど、気を遣って疲れてたら本末転倒だよな。
「……でも、ありがとう。お義母さんやお義姉さんに、もう少し甘えてみようかな」
「うん、うん。三人とも大歓迎っスよ」
身内が殆どいないみわ。
本当の母親だと思って頼ってねと言ってはいたが、そんな簡単な話でもないんだろうな……。
「普通の家なら、父親が週に1日とか2日とか休みがあって家族の時間を過ごしたり、朝とか夜とか会えたりするんだろうけど……オレは留守がちだし、みわの負担を少しでも減らしたいんスよ」