第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「涼太、今日は本当にありがとう。涼太も疲れてるのにいっぱい休ませてもらっちゃって……すごく助かったよ」
口を開こうと思った瞬間、みわにそう言われて。
「いやこっちこそ、いつも家を空けててホントごめん……想像以上に大変すぎたっスわ。みわの苦労が目に浮かんだ」
「あはは、私、手際があんまり良くないし……普通ならもっとテキパキ出来ると思うんだけれどね」
逆、逆。
今日のオレの風呂場での戦争を録画して見せたい。
「みわは頑張ってるっスよ。頑張りすぎってくらい、頑張ってる。何が普通で何が普通じゃないとかオレには興味ないっスけど、ふたりが楽しそうに生きてるのが何よりの証拠でしょ。ママの事が大好きなんスよ」
「ほ……褒めすぎ……だよ……」
みわは、俯いてしまった。鼻が赤くなってるのが見える。
あの小さな生き物は、生きているだけでどれだけのキセキなのかというのを実感した。
当たり前なんてないのだ。
何ひとつ、ない。
「だからちょっとは、手を抜く事も覚えて欲しいんス。いっつもオレ達の為にめちゃくちゃ頑張ってくれてるの知ってるから、無理だけはしないで欲しい」
「手抜きしまくりだよ、見たでしょうあの散らかったお部屋を」
「あんなのね、散らかってるうちに入んないんスよ。ご飯だってこうやって出前頼んだりしてよ」
まるで賽の河原かってくらい、しまっては出され、しまっては出され。子どもがいる家庭の宿命である。
「時々こうやって一緒に食べられたら嬉しいけど、一人の時はなかなか……節約したいし」
こういうところ、出会った頃から全く変わってない。
自分のコトに金を使うという習慣が、あまりになさすぎて。
この間なんとなく口座の残高を確認したら大変な事になってて驚いた。
「それも、貯めすぎだからちょっとは使って?
オレ、金に苦労はさせてないと思うんスけど」
貯蓄に堅実な投資に、嫁さんに任せておけば我が家が破産する未来は有り得ない。
めっちゃ頼もしいんスけど、頼もしいんスけど!!