第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
19時半って、子どもが出来る前だったらご飯を食べるか食べないかっていう時間だったはず。
こんなにもガラッと生活リズムが変わってしまうことが驚きだ。
自分が小さい時も、こんな感じだっただろうか?
「ん、美味いっスね」
「美味しい! だしの味が深みがあって飽きないね」
秘伝醤油ダレのつけ麺、超美味い。
疲れた身体に濃厚な味が沁みる。ありがとう塩分。
「そだ、これ冷やしておいたんスよ。飲も」
「これ、なぁに? みかん……? 綺麗な橙色」
瀬戸内みかんジュースと書かれた大きなビンは、良くしてくれてるセンパイからのプレゼント。
彼も妻子持ちだからか、バスケだけではなく色んなアドバイスをしてくれる。
当事者以外で子育てに口出す奴はチンパンジーだと思え。
花を買う時間があるなら、5分でも早く家に帰れ。
教えて貰った、小さな子がいる家の鉄則である。
ましてや普段多忙でなかなか家に居られない身であるから余計に。
「そ、みかんジュース。めっちゃ美味いから奥さんと飲んでって、チームのセンパイがくれたんスよ」
「わあ、嬉しいな。今日は贅沢ばっかりだあ」
「まだ暫く酒は飲めないっスからね」
妊娠中から出産後、授乳中もアルコールは厳禁だから、みわは暫く飲んでない。
飲まない期間が長いと弱くなっちゃうんだよねと彼女は言うが、それでもオレより全然強い。惚れる。お持ち帰りされたい。
「そうだね……涼太、飲みたかったら気にせず飲んでね」
「うん。とは言えオレ、ストレス発散に飲むとかしないし、食欲が湧かない時にちょっと飲むくらいなんスよね。一応アスリートだし」
「ふふ、一応って……世界的に活躍している黄瀬選手の間違いでしょう」
あ、いつもの笑顔だ。可愛い。
やっぱり笑ってて欲しい。