第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「みわも入ったら?」
「うん、ふたりのご飯終わったら入らせて貰おうかな」
キッチンで子ども用の甘いカレーが入った鍋をかき混ぜながら、みわはそう言った。
自分のことは、全て後回し。
「おなかすいたー!」
「お待たせしました」
「わーい! いただきます!」
「はい、召し上がれ」
息子は小さいスプーンで一所懸命カレーを口に運んでる。
スプーンの使い方がまた上手くなっている事に驚いた。成長速すぎる。
娘はまた幸せそうな顔でおっぱい飲んでる。
こんなに大変なのに、血までなくなるってマジ?
子どもたちを早く寝かせるため、とにかく急いでご飯やお風呂を済ませなければならない。
みわはいつも、寝かしつけてから何か食べると言っていた。
それも、下の子が泣き出したら出来るかどうか分からない。
育児は、予定通りに進むことなどないのだ。
休みもないし給料もない。
ブラック企業もビックリの状況。
「涼太も、待たせてごめんね。今作るから。食べたいものある?」
オレがいきなり今日休みになったから、冷蔵庫内の予定が狂ったかもしれない。元々今日は日が変わるまで帰れない予定だったから。
「……なんか今日、出前王国に頼まない? オレ、つけ麺食べたい気分なんスけど」
オレの発言に、みわはその大きい瞳を丸くした。
「つけ麺……? そっか、つけ麺だとうちに材料はないかな……」
彼女は食材保管庫をガサガサと探ってそう言った。
そりゃそうだ。うちに材料の買い置きがなさそうなメニューをわざと言ってる。
「この間動画で紹介してた店が美味しそうなんスよ。みわも食べない? 付き合ってくんないスか」
「うん、じゃあ頼もっか」
「寝かしつけてからでいいっスよ。まだそんな腹減ってないし」
ちょっと申し訳なさそうなみわを説得して、19時半にふたりが夢の中へ行った後、注文した。
「ふー……やっと一日が終わったって感じっスね……」
奇跡的に揃ってベッドで寝てくれた。
みわ曰く、1時間続いたら奇跡とのこと。マジっスか。