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【黒バス:R18】with gratitude

第9章 Some things never change(黄瀬涼太)


「つ、疲れた……」

息子が何故か漏らしたところを雑巾で拭いて、拭いて待たせているうちに娘が泣いて、娘をあやしているうちに息子が泣いて、ナニコレ?

息子を洗って、終わったから湯船に入って待ってて貰って、次は娘……だけど溺れたらシャレにならないから息子から目は離せない。

ハラハラしながら娘も洗い終わり、少し湯船に抱っこしながら入れて、さあこれからオレも髪を洗って……

「パパ、でるー」

「え?」

「あついからでるー」

「え? もう? パパ髪洗うからちょっと待ってくんないスか」

「でるー!」

「待っ……」

待ってハゲそう。

これもしかして、【子どもを先に風呂に入れて、後で自分だけ入る】が正解だったのでは?

いや、一人で入ってる間に赤子が泣き出したらどうすんだ?

もはや虚無モードになりつつあるところに……浴室のドアのガラスがコンコンと鳴った。

「あ、ママだー!」

「ごめんね、いっぱい寝ちゃって!」

「あついからでるー!」

「はいはい、タオルと着替え出してあるよ」

ドアの隙間から覗いたその姿、マジで誇大表現一切ナシで、女神かと思った。菩薩か?

オレは宗教にキョーミがないからなんでもいいんだけど、みわ教なら入信したい。いや、します。

「涼太ありがとうね、あとはやるからゆっくり入って」

みわはそう言って娘を受け取り、息子に声を掛けながら二人をちゃちゃっと着替えさせ、その場を去った。

その手際の良さたるや。

シンとしてちょっと寂しくなったバスルームで足を伸ばして、大きく息を吸った。

一日……いや、半日か?
たったこれだけの時間だけど、どれだけ大変なのかを身をもって知った。

可愛いだけじゃない、自我がある生き物を育てるという仕事の大変さ。
そして大変さの割に、達成感みたいなものがないからモチベーションの維持が困難だ。

こんなの毎日続いたら、擦り減る。
みわの疲れた顔を見たら火を見るより明らかなんだけれど。


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