第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「ママはー?」
「ママは今ねんねしてるから、パパとお風呂入っとこう」
「はいるー!」
幼稚園に迎えに行って、公園に行きたいという息子と公園で遊んで帰って来た。
文字にしたらたったこれだけなのに、バスケを一試合終えたくらいの疲れ方だ。
なんだろう、体力は残ってる。残ってるんだけど……自分の思った通りに何一つ事が運ばない事に対する疲れと、チビから一時も目が離せない気疲れと。
とにかくなんか、すげえ疲れた。
ぐったりだ。
夕飯の前に風呂に入らねばならない。
みわはいつも、16時には風呂に入ってると言っていた。休憩している暇はない。
流石みわ、風呂は沸かしてあるし、キッチンからご飯の炊けたいい匂いがしてくる。
寝室をそっと覗いたけど、ちょっとの音じゃ目が覚めないくらい熟睡出来てるみたいだから、まだ寝かせてあげたい。
オレがワンオペで頑張らなければ。
「パパはやくー!」
「すぐ行くっスよー」
息子は光の速さで脱皮……じゃなくて脱衣し、バスルームのドアを開けた。
さて、娘はどうしたものか。
……あれ? 沐浴? 違う、あれは新生児だ。
一緒に風呂入っていいんスよね、うん。
うん? 一緒に? いや、一緒に入って待っててもらう? ん? 洗う時どーすんの?
むしろオレが洗う時間はどこにあるの?
詰んでねえスかこれ?
「パパ! はやく!」
「ちょ、ちょっと待ってくんないスか!」
この数分で何回『待って』を言っただろうか。
待って。お願いだから待ってて。
娘を脱がせてから、自分がまだ服を着ていたことに気付く。さっさと脱がねば。
「パパー!」
「はいはい、なんスかー!?」
「もれちゃったー」
「もれ……はい!?」
脱衣所でオレを待っていた息子、バスルームに入る手前に水たまりが出来てる。
「え!? トイレ行きたかったんスか!? なんで!?」
「うーん……わかんない」
分かんない!
オレも!
状況が!
全く!
分かんねえっス!