第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
「幼稚園も、ありがとうね。大丈夫だった?」
「ん。ご機嫌で教室に入ってったっスわ」
「そっか……良かった。涼太ってすごい」
「レアキャラと一緒に登園出来たから、気分が変わっただけっスよ」
涼太は自覚がないけれど、我が家の中でも本当に物凄い存在感なのだ。
パパが大好きな息子は、きっと一日中はしゃぐ事だろう。
美味しくお昼ご飯を頂いたあと、食後にルイボスティーまで淹れて貰って。
しかも娘は涼太が抱っこしてくれて。
これ以上ない贅沢時間。
さて、もうすぐ13時……。
移動時間を入れると、お店に居られるのは30分強といったところか。
行かないよりマシだ。とにかく家を出よう!
「涼太、私これからちょっとお買い物に行ってくるね」
「買い物? お迎えの帰りに行って来るっスよ、足りないものメモくれれば」
「えっ?」
時が、止まった。
まさかそう言ってくれるとは思ってもみなくて、思わず『涼太のプレゼント』と書いたメモを渡したらどうなるだろう……なんて妄想してしまった。
「ぷ、なんでそんな驚いてんスか? お迎え行くってば」
「お迎え、行くよ! 涼太は少しくらい休んでて」
朝から今現在まで、彼は全然休めていない。
明日からまた忙しい日々なのに……!
「今まさに思いっきり休んでる時間っスわ。何買うか決まってるんスか?」
「あのー……、買うもの、は、まだ決まってなくて」
「ん? 食材は今日届くってカレンダーに書いてあるっスよね、他に足りないものがあるってコトっスか?」
「……」
ぐうの音も出ない。
足りないんです。
涼太をお祝いするアイテムが、足りないんです!
「みわ?」
……涼太がお迎えに行ってくれればプレゼントを買いに行けると一瞬頭に浮かんだけれど、涼太への贈り物を買うために涼太に子ども達をお願いするのって、本末転倒な気がして。
もう、事前にちゃんと準備しておかなかった自分が一番悪い!