第9章 Some things never change(黄瀬涼太)
息子は幼稚園への登園を嫌がる事も多々あるけれど、今日は普段会えないパパと行けるということで、全くぐずる事なくすんなり出て行った。
大好きな格好良いパパ、涼太の力は絶大である。
日本に居ない事も多いし全然お休みがとれない涼太だから、お休みは喜ぶべきことなんだけれども……いや実際にとってもホッとしてるんだけれども。
なんとか今日一日かけて、明日の涼太のお誕生日の準備をしようとしていたのに!
乳児との時間が久しぶりすぎて、殆ど寝れない生活の影響なのか、ずっと身体が怠くて頭がぼんやりしている。
腕の中の娘が眠っているうちに、私も少しだけ仮眠を取ろうかな……このままじゃ、効率良く動けそうな気がしない。
そう思って、ベビーベッドに小さな身体をそっと横たえたと思ったら……閉じていた目がパッチリと開いた。
絶対、背中に目覚ましスイッチが付いてるんだ……と毎回思う。
泣き出した娘を再度抱き上げた。
強烈な泣き声は頭の奥に響く。
産後の母親は本能的に、この声を敏感にキャッチできる状態になっているんだって。
確かに、どんなに深夜でも寝入っていても、泣き始めの小さな声でバチッと目が覚める。
ちょうどお腹が空いている時間だと気付き、ソファへ座って授乳を始めた。
右胸の授乳を終えて反対側を咥えさせたところで……泥のような眠気が押し寄せてきた。
実は昨夜は一睡もしていない。
まだ昼夜の感覚が身についていない月齢だから仕方ないけれど、上の子がいる以上、日中もいつでも空き時間に眠れるというわけでもなくて。
だから今朝のように、誰かが幼稚園に連れて行ってくれるのはとっても……助か……りょうた、お誕生日のプレゼント……、お買い物……いかなきゃ…………。