第2章 海と大地のまんなかに。
睨み付けるように私を見ていた光は、不意に私から目を逸らして歩き出した。
「行こーぜ!」
「ぇ、でも……」
どんどん遠くなっていく光と立ち止まったままの私とを、戸惑った様子で見つめているちさきに苦笑しながら言う。
『私がここでまなか待つから、ちさき達は先に行ってて?』
それでも不安そうな顔で立ち止まっているちさきを見かね、要がちさきの手を取った。
「ま、早く来なよ」
適当に返事をして歩き出した要とは違い、まだこちらを気にしているちさきに手を振り、目の前を通り過ぎて行く魚に目を向ける。
(……少し、言い過ぎたかな)
一人になると頭は徐々に冷静になってくる。
最終的に光が悪者みたいな形になってしまったけど、言ってることは光の方が正しかった。
約束を破ったまなかは悪くないのかと問われると、悪いとしか言いようがない。
でもだからと言って光のように手を出してしまうと、正論は正論でなくなってしまうこともある……と思う。
結局自分はどうするべきだったのか、考えれば考える程わからなくなって、
(光には、あとで謝ろう…)
そう自己完結させて考えるのをやめた。
「まーちゃーん!」
ぼーっと宙を見つめていた視線を、声のした方向に向ける。
慌てて着替えたからなのか走って来たからなのか、こちらにやって来るまなかの髪はどことなく乱れている様に見えた。
私の目の前までやって来て、膝に手を付いて息を整えているまなかに手を差し出す。
『行こ、まなか!』
私は笑顔でこちらに手を伸ばすまなかに気を取られていて気付けなかった。
私達五人の関係を大きく掻き乱す出来事が、背後から迫って来ていることにーーーーーー……
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