第2章 海と大地のまんなかに。
(なんで俺が怒られなきゃなんねぇんだよッ)
どう考えたって悪いのは約束を破ったまなかで、俺が怒られなければならない理由はひとつもない。
(なのに真依の奴、全部俺が悪いみたいに言いやがって!)
真依のことだから、今日もいつもと同じ様にまなかを家まで迎えに行ったはずだ。
ということは、真依はまなかが濱中の制服を着て来るのを知っていたことになる。
だったらなんですぐに着替えるように言わなかったのか、俺には理解出来ない。
あいつがまなかに甘過ぎることへの苛立ちか、あいつを理解出来ない自分への腹立たしさか、それともその両方のせいか俺の苛立ちは治らない。
ゆらゆらと目の前を横切って行く海月もいつものことなのに、今はそれさえ鬱陶しく感じる。
俺は小さく舌打ちをして水を強く蹴り、空を見つめながら泳ぎ出した。
数秒も経たないうちに陽の光の滲んだ水面から顔を出すと、肺に空気が溜まっていくのがわかった。
水のおかげで和らいでいた日射しは思っていたよりも強く、あまりの眩しさに思わず目を細める。
じりじりと肌を焦がす太陽を無視して、すぐそこに見えている防波堤に向かって泳いでいると俺の後ろで水音がした。
首から上だけをそちらに向けると要やちさきと一瞬目が合ったが、誰も何も言わずにまた前を向く。
真依はまなかを待つと言っていたから、そこに真依が居ないのはわかっていた。
それでも振り返ってしまう自分に呆れていると、いつの間にか防波堤の前まで来ていた。
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