第3章 ひやっこい薄膜。
学校から帰って来てすぐのことだった。
「呪ってくださいっ、お願いします!」
何故か神社へと帰る私のあとをまなかがついて来ていたが、こう言うことだったのか。
社の上がり口で所謂土下座をして見せるまなかと、それを退屈そうに見下ろすうろこ様。
「うぅむ、なんでお前はそう呪われたいんじゃ」
うろこ様は手にした四つ折りの新聞を流し見ながらそう言う。
「ぇっ!そ、それは、嘘を吐いてるのが辛いからですっ!」
「どうして嘘を吐くんじゃ?」
私も、まなかが誰に嘘を吐いているかは知っていても、何故そうするかまではわからない。
「あっ……、そう言われると、どうしてだろう……」
本当にわからないと言うように、そう零すまなかを見たうろこ様が小さく笑った気がした。
「お前は今まで、いっつも誰かに守られてきた」
そんな風にゆっくりと、言い聞かせるように語り始めたのはうろこ様だった。
「光や、真依や、ちさきや、要や……お前はその後ろをちょんちょろちょんちょろ付いて居れば良かったじゃろ」
どこからか見ていたかのような口振りで、私たちの関係を再確認させるかのように。
「それが、皆に守られない所に行こうとしている。自分を守る為にはな、多少の嘘も必要になって来る」
少し難しい言い回しな気がした。そしてやっぱりどこかずるいのだ、うろこ様という人は。
うろこ様の言葉の意味するところがわからないのだろう。
まなかは戸惑ったような表情で固まっていた。
「やめてよおじさんっ!!やめてって!!」
けれど、外から聞こえて来る聞き覚えのある声につられて、社から出て行った。
「真依、お前も行って奴らを黙らせて来い」
私が出て行くと余計に拗れる気がするのだが、ご指名ならば仕方ないとまなかのあとを追った。
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