第3章 ひやっこい薄膜。
「あぁ、海っ子達はそろそろ帰らないとだなぁ。あとはやっとく〜」
「すみません!」
少し離れた所で別の作業をしていた先生からそう声がかかり、それにちさきがいち早く応える。
光は工具を箱にしまい、私達はそこまでで仕上がっている木の枝を手分けして猫車に乗せる。
「結構な量になったよね」
『そうだね。お疲れ、光、紡』
おう、とか、あぁって言葉が返って来るのを聞いていると、光が真っ先に鞄を手にしているのが見えた。
帰りに教室に寄るのが面倒なため、近くの木の根元にまとめて鞄を置いていたのだ。
それぞれ手の空いた人から鞄を手に取り、私も少し遅れて紺色の鞄を背負う。
「んじゃ帰るか」
光の言葉に頷き合って、みんな揃って森から抜ける。
私達のあとを紡と先生もついて来ていて、見送りに来てくれるらしかった。
楽しかったねと笑い合っているちさきとまなかの声を聞きながら、水色の焼却炉の前を通り、土と杭で出来た階段を下りればもう校舎裏だ。
そのまま正門の方へ向かって歩いている途中、少し前を歩くまなかとちさきがこちらを振り返り、階段の上で見送ってくれている紡と先生に向かって手を振った。
「「さようなら〜!」」
その声に連られて、私も一応と振り返ると、先生が私達に向かって手を振り返してくれているのが見えた。
「おつかれぇ〜、気を付けて帰れよぉ〜!」
にこにこと笑いながらの間延びしたそれが何だかおかしくて、少し笑ってしまう。
ぺこりと一度だけ頭を下げ、私はみんなのあとを追った。
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