第3章 ひやっこい薄膜。
だって、そんなことが有り得ていいのだろうか。
子どもの私ですらそう感じてしまう程に、地上の人達は身勝手だと思えてしまう。
自分達のはじまりも忘れて、自分達が海から得ているものを蔑ろにしているとは思わないんだろうか。
私が、海の神様に近いところに居るから、そう感じてしまうだけなのだろうか。
「ひかりっ、落ち着いて!」
そんなちさきの声が聞こえ、あぁ、私だけがこの感情を抱えているわけじゃないんだと気付いた。
「やりたい人、いる〜?」
先生が再度声をかけ、しんとした教室を見回していると、私の目の前の席で手が挙がった。
予想はしていなかったけれど、何となく納得は出来てしまった。
「はい!紡ねぇ」
その存在に気付いた先生が指を指して名前を呼ぶものだから、クラスメイトの視線がこちらに集まる。
自分に向いているわけではないけれど、紡越しに集まるたくさんの視線に耐えられず、私は助けを求めるようにみんなの方へ視線を逸らした。
すると、嬉しそうな表情で紡を見ていたまなかも手を挙げる。
そうなると、やはり光も黙って見ているわけがなかった。
渋々ながらもだるそうに右手を挙げて、廊下の方に顔を向ける。
本来なら地上の人間の役割なのに、なんで自分達が……とか思っていそうな感じだ。
私も少なからずそう思うけれど、海への感謝を伝えるという意味では、私達にも関係のない話ではない。
まなかの気持ち、光の気持ち。
いろいろな感情が見え隠れする中、私も少し遅れて、おじょし様作りのメンバーに加わるために右手を挙げた。
*