第2章 海と大地のまんなかに。
すっかり真っ暗になってしまった帰り道。
私とまなかは、朝の男の子もとい紡と一緒に、青白い電灯の並んだ道路の真ん中を歩いていた。
紡の家から汐鹿生の近くまではそこそこ距離があり、途中までは自転車に繋げたリヤカーに乗せて貰った。
「その方が早いから」とは言われたけれど、人二人乗せて自転車を漕ぐのは相当大変だったはずだ。
『乗せてくれてありがとね』
自転車を押しながら隣を歩く紡にそう声を掛けると、「ああ」とだけ返って来る。
紡はわりと無口な方だと、この数時間を一緒に過ごしてみてわかった。
まなかはやっぱりさっきの事が恥ずかしいのか、あまり喋らず一人で私達の前を歩いていた。
紡の家を出る時に、お爺さんにお礼を言った時と、紡に名前を聞いた時くらいしか喋っていなかった気がする。
リヤカーに二人で乗っている時も、膝を抱えてぼーっとしていた。
そんなまなかのことが少し心配だったけれど、どう声を掛けていいか私にはわからなかった。
「真依っ!まなかぁ!!」
私達の進む先から、光の声が聞こえてきて目を見開く。
まさか、あれから今まで、ずっと私達を探していてくれたんだろうか。
嬉しい反面、光の身体が心配になり、今すぐにでも走り出したい衝動に駆られる。
「ひぃくーーん!!」
けれど、先に走り出したのはまなかだった。
「まなかっ!!」
そして、まなかに気付いた光が彼女の名前を呼んで一瞬立ち止まり、安心したような表情を見せる。
けれど、それは一瞬の事だった。
その後ろからやって来た私達、もっと言うと私の隣に居る紡を見つけた途端、光はこちらに向かって走り出した。
何となくこれから起こることは予想出来ていたのに、私の身体は動かなかった。
「てめぇまなかと真依に何してやがんだよっ!!」
私が止める間もなく、光はそんな見当違いな言葉を吐き散らしながら紡の胸倉を掴んでいた。
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