第2章 海と大地のまんなかに。
自分を覆っていた布が取り払われたからか、ぎょめんそうが嬉しそうに一声鳴いて見せると、
「ぷはっ」
私の正面で眠っていたまなかが目を覚ました。
「はあぁっ、よかったぁ」
体を起こして大きく息を吐いたまなか。
意識がまだぼんやりしているのか、薄く開いたまなかの目と私の目は合わない。
「なんだかあちこちチカチカ光って見えて…」
ぽつりぽつりと倒れた時のことを思い返しているまなかの視線が、やっとこっちに向けられた。
「まーちゃん…?」
ほんのりと色付いた頬は、彼女の体調が回復している証拠だろう。
ひとまず安心した私がまなかに声をかけようとした時、不意にまなかの視線が左へと逸れた。
当然、そこにはあの男の子がいる。
まなかのびっくりした表情が容易に想像出来たのだけど、
そうなる前に、空気の読めないぎょめんそうがまた鳴き声を上げた。
「きゃぁぁっ!!見ないで見ないでぇ!!いたぁっ!!?」
タオルが外れていることに驚き、男の子に見られる前にと、慌てて自分の膝を抑えつけるまなか。
私は心の中で、彼を止められなかったことを謝るしかなかった。
そんなことを思っていると、いつの間にか男の子の姿はなくなっていて。
「やっぱり、気持ち悪いんだ…」
男の子がこの場から出て行ったことを、そう捉えても仕方ないと思う。
けれど、何故か私にはそんな風には思えなかった。
『まなか…』
私がまなかを慰めようと右手を伸ばした時、浴室の入り口の方から床のきしむ音がした。
二人してそちらに視線を移すと、そこには片手に小さくちぎったパンを持った男の子が居た。
「それ…」
彼がそれを持って来た意味がわからないのか、そうまなかが呟く。
私は彼のやりたいことがわかってしまった気がして、少し気まずかった。
彼は浴槽の傍にやって来て、持っていたパンをまなかの膝……ぎょめんそうの口元に持っていく。
「食うかな……?」
そんな彼を見て思ったのは、彼はきっと、まなかとはまた違ったタイプの天然だということ。
ぎょめんそうがばくばくと口を開けてパンに嚙り付こうとしている所を見ると、食べられない訳ではないらしい。
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