• テキストサイズ

煌めく碧の御伽噺【凪のあすから】

第2章 海と大地のまんなかに。





お昼の眠くなる時間を通り越し、そろそろ目も冴えてきたかなって頃に限って、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

「はい!じゃあノートは来週集めるから~」

そう言って、今日初めて会った優しそうな女の先生が教室を出て行った。

ちなみに濱中に帰りのHRはなく、私達はこのまま下校になる。



「帰ろっか」

鞄に教材やノートを詰めていると、ちさきがそう声をかけたのが聞こえた。

私とまなか、二人に向かっての言葉であろうそれにまなかが答える。

「ひぃくんと要は?」

まなかは自分の机の横に引っ掛けてある鞄を手に取りながら、首を傾げた。

『男子木工だったから、教室の前で待ってよっか』

私達は先に帰る準備をしておいて、鞄を取りに戻って来た二人と合流すればいいだろう。

「うん!」

その簡潔なやり取りを終え、二人よりも先に帰り支度が終わってしまったので、ぼーっと外の景色を眺めていた。



窓の外、植え込みの近くをひらひらと蝶々が舞っていた。

海村では絶対に見ることのないそれの名前は、何だっただろうか。

黒色の枠の中に散りばめられた、黄色、赤、青の色とりどりの模様。





「……ねぇ」



あぁ、あれは確か……“揚羽蝶”と言うんだ。



「きゃっ……、やあぁぁ!」





私がそんなことを考えている間に、それは起きた。



突然耳に入ってきたまなかの悲鳴に、私は慌ててまなかの席の方に振り向く。

けれど、既にそこにまなかの姿はなく、私のすぐ後ろからまなかの痛がる声が聞こえた。



/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp