第2章 海と大地のまんなかに。
お昼の眠くなる時間を通り越し、そろそろ目も冴えてきたかなって頃に限って、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「はい!じゃあノートは来週集めるから~」
そう言って、今日初めて会った優しそうな女の先生が教室を出て行った。
ちなみに濱中に帰りのHRはなく、私達はこのまま下校になる。
「帰ろっか」
鞄に教材やノートを詰めていると、ちさきがそう声をかけたのが聞こえた。
私とまなか、二人に向かっての言葉であろうそれにまなかが答える。
「ひぃくんと要は?」
まなかは自分の机の横に引っ掛けてある鞄を手に取りながら、首を傾げた。
『男子木工だったから、教室の前で待ってよっか』
私達は先に帰る準備をしておいて、鞄を取りに戻って来た二人と合流すればいいだろう。
「うん!」
その簡潔なやり取りを終え、二人よりも先に帰り支度が終わってしまったので、ぼーっと外の景色を眺めていた。
窓の外、植え込みの近くをひらひらと蝶々が舞っていた。
海村では絶対に見ることのないそれの名前は、何だっただろうか。
黒色の枠の中に散りばめられた、黄色、赤、青の色とりどりの模様。
「……ねぇ」
あぁ、あれは確か……“揚羽蝶”と言うんだ。
「きゃっ……、やあぁぁ!」
私がそんなことを考えている間に、それは起きた。
突然耳に入ってきたまなかの悲鳴に、私は慌ててまなかの席の方に振り向く。
けれど、既にそこにまなかの姿はなく、私のすぐ後ろからまなかの痛がる声が聞こえた。
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