第2章 海と大地のまんなかに。
次の日の朝。
いつもの集合場所にいくら待っても姿を見せないまなかが心配になり、みんなで彼女の家までやって来た。
『「「まーなかちゃんっ」」』
玄関先で声を揃えて名前を呼ぶと、少ししてがらがらと扉が開かれた。
けれど、そこから顔を覗かせたのはまなかではなかった。
「あら、迎えに来てくれたの?」
そう言って少し困ったような顔をしているまなかママに、光が尋ねる。
「まなかは?」
「それがね、部屋から出て来なくて…」
と言うことは、寝坊とかではなくて起きては居るのだろう。
「ぁ、俺行ってきます」
それだけ言った光は、地面を蹴り、あっという間にまなかの部屋のベランダへと昇っていく。
光には女の子の部屋に入るということに躊躇いはないんだろうか。
はぁ、と一つ溜息を吐き『私も行ってきます』とだけ伝えて光の後を追いかける。
「来ないでえぇぇぇっ!!!!」
ベランダに降り立つよりも先に、悲鳴に近いようなまなかの叫びが聞こえた。
気が付くと私はガラス戸を勢いよく開けて部屋の中に入っていた。
『どうしたのっ!!?』
ベッドの傍で蹲り膝を抱えているまなかと、入ってすぐの所で棒立ちしている光が目に入るけれど、状況がいまいち掴めない。
「来るなってなんで…」
近づくなと言われているのに歩みを進める光を止める間もなく、
「こっち来ないでっ、来ちゃダメッ!!いたっ!?」
まなかが下に降りて来なかった理由が、私達の前に晒された。
痛いと言って、抱えていた膝から身体を起こしたまなかは、はっとした表情で私達を見るがもう遅い。
彼女の膝小僧からにょきりと生え出た、灰色の気味の悪い魚が蛙のようにぐえぇと鳴く。
『「うわぁぁ…」』
これは十中八九、うろこ様の呪いだろう。
確かに昨日「呪うぞ」なんて言っていたような気もするが、まさか本当に呪うだなんて……。
『まなか、あの人に何したの…』
私も一度だけあの魚を生やされたことがあるが、あれは想像以上に精神的に来るものがある。
「煮物……」
まなかはその一言だけを呟いて俯いてしまった。
煮物と言えば、昨日床にころがっていたのを拾い集めたなぁと思い出すが、何のことを言っているのかまではわからない。
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