第2章 海と大地のまんなかに。
『あかりさん、大丈夫かな…』
彼女の何か抱え込んでいそうな表情を思い出して、少しでも力になれないだろうか…なんて烏滸がましいことを考える。
「俺等が気にしてもしょーがねぇだろ」
あいつの問題なんだから、と呟く光の言葉はどこまでも正しい。
『そうなんだけどさ…』
それでも何となくすっきりしないままただ泳いでいると、海村の入り口近くまで帰って来ていた。
ふわりと地面に足をつけて、何も言わずに歩き出した光の後を追う。
時々すれ違う大人に「おかえり、陸はどうだった?」と声を掛けられて、その度に『暑くて溶けそうでした』って答えた。
光は何も答えなくて、今日一日で何を感じていたのかはよくわからない。
その背中からわかるのは、ただいつもより少し機嫌が悪いってことだけだった。
「おぉ光っ!」
白い塀の淵をのろのろと這っているうみうしを見つめながら歩いていると、光が誰かに呼ばれた。
その声に反応して立ち止まった光のすぐ傍で同じように足を止めてから、そこがどこなのかに気付く。
「っ、と……真依か…」
鹿生の集会所の目の前だ。
入り口から光に声をかけたであろう酒木のおじさんは私の存在に気が付くと、少しだけ表情を曇らせたように見えた。
まぁ実際、そうなんだと思う。
「とにかくこっち来いっ!!」
それがわかってしまったからという訳じゃない。
ただ、陸の人達を悪く言うことしか出来ない大人達を見るのが嫌だったから。
『光、私先に帰ってるね』
それだけ言って、引き留めようとしている光の言葉も聞かずに帰るべき家へと急いだ。
*