第2章 海と大地のまんなかに。
学校から出ると太陽の光がじりじりと肌を焼き、胞衣が渇いていくのがわかった。
無駄にうるさい蝉の鳴き声もこの暑さも全部が鬱陶しい。
地面に転がっていた石を蹴飛ばすと思っていた方向とは別の方向へ飛んで行き、また苛立ちが増す。
俺はあいつらと一緒に帰るのが嫌で、SHRが終わってすぐに荷物を持って教室を出た。
俺を呼び止めるちさきの声が聞こえたけれど、聞こえないふりをした。
今あいつらと一緒に居ると、何を言ってしまうかわからなかったから。
体育の時、俺が転んだのを見ていたんだろう。
あの時一緒に巻き込んで怪我をさせてしまったあいつにちゃんと謝ったのかと、体育が終わってすぐ真依に問い質された。
実際のとこちゃんと謝れてはおらず、口篭る俺を見た真依はそれを察したらしく『馬鹿!』と一言叫んで、俺のかわりにあいつに謝ったのだ。
「別に気にしてない」と平然と言ってのけるあいつを、
『そっか……、やっぱり優しいね』
やわらかく笑いながら褒める真依に無性に腹が立って、俺は思わず言ってしまったんだ。
「お前は俺の保護者かよ」って。
『あー……そうだよ、ね、ごめん』
そう言って、苦しそうにへらりと笑った真依の顔が頭から離れない。
「くそっ……」
いつまでも子どもじみた態度しか取れない自分に苛立って、いつも通り後悔だけが残る。
そんな自分が情けなくて、歯痒くて、奥歯を強く噛んだ。
『ひかりーーーっ!!』
その直後に聞こえて来たのは、今日俺が一番傷付けてしまったであろうあいつの声。
昔から、俺が誰かと喧嘩をしたりして一人で不貞腐れていると、決まってやってくるのは真依だった。
真依自身と喧嘩した時もそうでない時も、ただ隣に居て俺の話を聞いてくれる。
愚痴も、後悔も、俺の抱える歯痒さも全部。
俺は今までずっとそれに甘えていた。
けれどこの甘えも、そろそろやめにしなければいけない。
そうでないと俺は、自分で自分の大切なものを傷付けることになる。
どうしようもなく馬鹿な俺は、ようやくそのことに気付いたのだ。
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