第2章 海と大地のまんなかに。
先に言い出したのは今私達の目の前で不満そうな顔をしている人達だけど、光もそれと同じようなことを既に言ってしまった。
これ以上光が何か言う前に止めなくちゃと、光のいる方に顔を向ける。
「ひぃくんっ!」
だけど、私よりも早く光の腕を掴んだのは、戸惑いの表情を浮かべたまなかだった。
光の腕に添えられたまなかの小さな掌に、少しだけ胸が痛んだような気がした。
「まなか、お前もかましてやれよっ」
光のその言葉に一瞬で顔を真っ赤に染めて光の腕から手を離すまなか。
「っ、かますって…」
呟きながら視線を泳がすまなかの目が、そのまま窓際の席のあの男の子へと向けられる。
「で、出来ないよそんなのっ!」
弱々しくけれど光の目を見てはっきりと言い放ったまなかが気に食わなかったのか、光は眉を吊り上げてゆらりとまなかに向き直る。
それを見た私の体は考えるよりも先に動いていた。
『ちょっと光っ!』
まなかに掴みかかろうとする光の肩を掴んで動きを止めると、光に鋭い目で睨まれたけどそんなの気にしてる場合じゃない。
「さっきからなんなんだよお前!俺にばっか突っかかって来やがって…」
このままだと光は、確実にクラスに馴染めなくなる。
『とりあえず、その話は後にして?今はまなかの自己紹介が先!』
光の目を見て出来るだけ静かな声で言うと、光は苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。
その後ろから不安気な表情でこちらを見つめているまなかと目が合う。
『まなか、とりあえず自己紹介しよ?』
苦笑しながら言えば、小さく頷いて前に向き直ったまなかが自己紹介を再開した。
*