第2章 海と大地のまんなかに。
馬鹿にしたようにクスクス笑い出す女の子達に、開いた口が塞がらない。
陸人しか居ない濱中で海人の私達が浮いてしまうのは最初からわかりきっていたことだ。
だけど、本当は心のどこかで期待していたんだと思う。
海人か陸人かなんて関係なく接してくれる人も中にはいるんじゃないか…って。
だから私は今、こんなにも悲しいと感じているんだろう。
「やっぱ海の奴ら、ダセーよなぁ!」
だけどそんなことを考えるのは間違いだったのだと、さっきとは別の誰かが呟いた言葉によって気付かされた。
徐々に湧き上がって来る怒りでいつの間にかきつく握りしめていたらしい拳が震える。
『っ、そんな言い方…「あーーあぁッ、くせぇくせぇ‼︎」
私の声を遮るようにしてそう言い放ったのは隣に立っている光だった。
「先島光!」
一瞬で静かになった教室に光の声だけが響く。
何か良くないことを言いそうな雰囲気ではあったけど、もう止める気にもならなくて黙ってるつもりだった。
「地上の奴らは豚臭いっすねぇー‼︎」
だけど、陸人を馬鹿にするように自分の鼻を摘みながら声高らかに言う光に私の胸は早鐘を打ち始める。
自分が想像していたよりもずっと光は子供だったみたいだ。
「よろしくプギーーーッ!」
鼻を摘んでいた右手で豚の蹄…?を作って意地悪く笑う光に、握りしめたままだった掌に変な汗が滲む。
(やっぱり止めるべきだったんだ…!)
引き攣った顔で唖然としているクラスメイト達が、光の言葉を聞いて何を思ったのかなんて考えなくてもわかる。
私がみんなを馬鹿にされて腹が立ったのと同じで、自分の家族や友達を馬鹿にされたら怒りたくもなるだろう。
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