第2章 海と大地のまんなかに。
身体はぴくりとも動かないし、息も上手く出来ている気がしない。
引き上げた網の中身の重さに耐え切れず、船が大きく揺れているのがここからでもわかる。
もともとあの網は魚を捕るためにあるのであって、人が入るようには出来ていないのだから当然だ。
(なのになんで、まなかと真依がそこにいるんだよ……)
あいつの視線はどう見ても、船の上の男の方へと吸い寄せられていて。
そんな光景見て居たい訳がなくて。
さっさと目を逸らしてしまえばいいのに、身体が言うことを聞かない。
こんなことになるなら二人を置いて来るんじゃなかったと、今更後悔しても遅いのだと、誰かに言われているような気がした。
だって、綺麗だと思ってしまったんだ。
太陽の光を反射して輝く水面も、空を飛ぶ鴎の鳴き声も、今この瞬間のためにあるのかと疑う程に……。
あいつは俺の知らない所でこれからもいろんな奴と出会うんだろう。
それでも、どんな奴との出会いも今日の出会いには勝てないような気がした。
たぶん俺なんかがいくら頑張っても勝てないんだろうなと、ぼんやりとした頭で考える。
もしあいつに好きな人が出来たら、俺はどんな顔をすればいいんだろう。
それが俺じゃない誰かだった時、俺はあいつの隣でちゃんと笑えるだろうか。
*・*・*・*
俺は、見てしまったんだ。
誰かが誰かと、特別な出会いをした
その瞬間を――――――…。
*